東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却をめぐり

東芝半導体子会社「東芝メモリ」の売却をめぐり、「日米韓連合」に参加する米投資ファンドベインキャピタルが今週、新たな買収案を提示した。米ウエスタンデジタル(WD)と係争中でも売却できる仕組みが盛り込まれており、東芝も精査を急ぐ。ただ、新提案は連合内での調整がついていない。東芝は新提案を交渉が膠着(こうちゃく)化するWD陣営に譲歩を迫るための材料に利用するとの見方もある。

http://minkabu.jp/blog/show/823310
http://minkabu.jp/blog/show/823357

 ベインの新提案は、ベインと東芝が出資してそれぞれ議決権の約46%を握り、米アップルは3千億~4千億円の優先株を取得、韓国半導体大手のSKハイニックスや大手銀行が融資し、WD陣営と同様の2兆円規模の買収金額を確保するとしている。

 当初の買収案は官民ファンドの産業革新機構が係争解決を出資の条件としたため行き詰まったが、新提案はWDとの係争が解決した後に革新機構などが株式をベインから取得する仕組みだ。ただ、革新機構関係者は「ベインが革新機構に株を譲渡する際、買収時にリスクをとった見返りに高値で売りたいといわれる可能性もある」と警戒感を示しており、実現するかは見通せない。

http://minkabu.jp/blog/show/823358
http://minkabu.jp/blog/show/823371

 また、WDとの訴訟が長引くと日米韓連合との契約後に裁判所から売却を差し止められる可能性も残る。

 東芝には、ベインの新提案をWD陣営への対抗案に仕立て、東芝メモリの経営への関与で強硬な姿勢を崩さないWDを揺さぶる思惑も見え隠れする。

 ただ、最低半年程度かかるとされる中国の独占禁止法の審査期間を勘案すると、契約締結までに残された時間はほとんどなく、土壇場での駆け引きで交渉が長引けば、命取りになる懸念がある。(万福博之)